にじいろしぐれ
「どこから来たの?」


私はきっと夢を見ているのだろう。


でも何故こんな訳の分からない夢を見ているのだろうか。

「.....」


「お嬢ちゃん、喋れないの?」


明らかにイライラした金色の瞳が私を捉えている。

ここが夢でも彼の言葉を無視するのは気が引けて私は口を開いた


「...しゃ、喋れます。」


金色の瞳がより一層鋭くなる。

怒らせてしまったのだろうか。

あぁ、でも夢だから関係ないか。


「そう、なら質問に答えて。どこから来たの?」


「え、えっと......」


なんて答えればいいのか分からずに視線を泳がせていると機嫌を損ねたのか彼が盛大なため息をついた


「はぁ.....。じゃあ質問を変える。なんでここに居るの?」

...。


私はなんでこんなに責められているのだろう。


自分の夢の中で何故こんなに気を使わなければいけないんだ


不思議な夢だな...


「聞いてる?なんでここに居るのかって聞いてるんだけど。」


彼がぐいっと顔を近づけてくる

ち、近い...

私は顔を逸らしながら必死に声をだした。


「.....。い、行くところがないから...。」

「ふぅん。そっか...」


彼は目を細めて微笑む


...そういえばこの人は誰なんだろう?


名前...知りたいな。

聞いてもいいかな...



「あ、あの...あなたは...?」


私は一生懸命声を絞る

そんな私に気づいたのか彼は面白そうに目を細めた


「俺は綺月(ハヅキ)。見ての通り妖だよ。」

綺月さん...

やっぱり妖だったんだ...

狐の妖怪...か。


「妖って聞いて驚かない子は初めてだよ。
ふふ、気に入った。お嬢ちゃん、名前は?」


「は、る......晴(ハ ル)です。」


「へぇ、晴か...。」


「...?」


綺月さんは何かを考えているような素振りを見せ、

私の目を見てにっこりと微笑んだ


「ねぇ晴。一緒に来ない?」


「え?」

綺月さんの目が細められる


もう逃げられないと錯覚してしまうほどに、
獲物を見つけた獣のようなでもどこか暖かい瞳だった


「晴行くとこないんでしょ?だったらさ、うちにおいでよ。俺一人で寂しいんだ。」


綺月さんはすっと手を差し出してきた
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