青藍─Seiran─
「じゃあ、またね」
「……うん、またね。名残惜しいけれど、今日は帰るね」
「ん、また」
鮎原さんから握られた腕に触れ、トボトボアパートに向かって歩く中、俺は鎌堂や驛さんの気持ちを盗み見たことを思い出した。
人は毎日本当にいろんなことを考えて過ごしている。その人の感情の一瞬だけを見る力を持ってしまった自分だが、その人のことを完全に知ることはできなくても、少しだけ知ることができる。
この少しの情報をどう受け止めるのかは、自分次第。