青藍─Seiran─




「……戻ろうか」

 一君は暫く雪の降る様子を見ていたが、間もなく呟くと、扉を開けて中に入ろうとする。

 しかし何かを言いたかったらしく、扉を途中まで開けた所でふいに振り返り、一君は私を見下ろした。

「ピアノの先生なんだっけ」

「うん、一応」

「すごいね、ピアノ」

 それだけを言うと、次は本当に中に入って行った。


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