グッバイ・リトル




信号が赤から青に変わる。


俺はゆっくりと歩き出して、横断歩道の白線を見るようにうつ向いた。


アユムとの距離が近くなる。

大丈夫。アイツは気づかない。


だって、こんなにも俺は変わってしまった。


可愛いままの俺ではなくなってしまった。



アユムと無事にすれ違って俺はホッとする。けれどすぐに……。




「……セナ、ちゃん?」


すれ違って数秒後、後ろでそんな声がした。


……なんで気づくんだよ、バカ。



振り向くか、振り向かないべきか。

そんなの、考えなくても答えは出てる。




どんなに抵抗しても、成長を止めることはできなかった。


ごめん。可愛いままでいられなくて。

ごめん。こんなに大きくなって。



でも本当は、俺、お前にすげえ会いたかった。




「アユム」


俺は振り向きながら、低い声で名前を呼ぶ。



この瞬間から、俺たちはなにか変わるだろうか。



信号がもうすぐ青になる。



止まらないのなら、あとは進むだけだ。




――グッバイ・リトル。


< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ごめん。ぜんぶ、恋だった。

総文字数/75,478

恋愛(純愛)139ページ

表紙を見る
ばいばい、津崎。

総文字数/118,257

青春・友情212ページ

表紙を見る
きみと泳ぐ、夏色の明日
[原題]夏色ブレス

総文字数/94,332

青春・友情164ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop