グッバイ・リトル
信号が赤から青に変わる。
俺はゆっくりと歩き出して、横断歩道の白線を見るようにうつ向いた。
アユムとの距離が近くなる。
大丈夫。アイツは気づかない。
だって、こんなにも俺は変わってしまった。
可愛いままの俺ではなくなってしまった。
アユムと無事にすれ違って俺はホッとする。けれどすぐに……。
「……セナ、ちゃん?」
すれ違って数秒後、後ろでそんな声がした。
……なんで気づくんだよ、バカ。
振り向くか、振り向かないべきか。
そんなの、考えなくても答えは出てる。
どんなに抵抗しても、成長を止めることはできなかった。
ごめん。可愛いままでいられなくて。
ごめん。こんなに大きくなって。
でも本当は、俺、お前にすげえ会いたかった。
「アユム」
俺は振り向きながら、低い声で名前を呼ぶ。
この瞬間から、俺たちはなにか変わるだろうか。
信号がもうすぐ青になる。
止まらないのなら、あとは進むだけだ。
――グッバイ・リトル。