グッバイ・リトル
セナという女みたいな名前と、小動物みたいな小さい身体。なにを食べても、なにを飲んでも俺はちっとも成長しなかった。
そんな俺は体力もなくて、休み時間にやっていたサッカーでさえも弾かれて教室で静かに過ごすことも多かった。
『ねえねえ、なにしてるの?』
そんな俺に声をかけてきたのがアユムだった。
男だけど女みたいな俺を気に入ったアユムは、大切に使っていたハートの消しゴムと同じように俺を〝可愛い〟という部類に入れた。
戦隊ヒーローのベルトをしても、変身シーンを完コピしても、高いところから盛大にジャンプしたって、アユムは俺のことを可愛いとしか言わなかった。
だけど、アユムとの関係はさほど長かったわけではなく、あいつは小学6年生の時に親の都合で遠い街に引っ越してしまった。
――それから5年。
俺は高校2年生になり、アユムも同じ17歳になって、こうしてメールのやり取りで繋がってはいるけど、俺たちはあれから一度も会っていない。