グッバイ・リトル
たぶん幼少期の成長が遅かった原因は俺の家のDNAにある。
いわゆるうちは女系家族。親戚も面白いくらい女ばかりで正月やお盆の集まりに参加すると肩身が狭いくらい。
俺も生まれるまでずっと女の子だと思われていたらしいし、小さい頃は姉ちゃんのお下がりばかりを着させられていた。
だから反発的に男っぽいものが昔から好きだったけど、うちの家では女が強くて父さんと俺に権限はほとんどない。
「あ、そういえばこの前、アユムちゃんのお母さんから連絡あったのよ」
母さんが思い出したように言った。
小学生の時にアユムの母親とPTAを一緒にしていた関係で、母さんたちが今でも連絡を取り合ってることは知っていた。
「えーアユムちゃんって、昔よくうちに来てたよね。お人形みたいに目がくりくりの子」
こんな時に決まって話に入ってくる姉ちゃんはいつものこと。
「そうそう、懐かしいわよね。絶対美人さんになってるはず」
「ってかアンタ、アユムちゃんの連絡先知ってんじゃないの?写メとかないわけ?」
「みい、アユムちゃんしらないよー」
わちゃわちゃとしてきた会話を無視するようにして、俺はそのまま家を出た。