グッバイ・リトル




この町に残っているアユムの残像は、小学6年生で止まってる。


引っ越しの日にクラスメイトたちとアユムを見送った時、あいつは最後まで別れの言葉を言わなかった。


もちろん俺にだって『またね』って、明日にでも会えるようなテンションでアユムは俺の前から消えた。




【セナちゃん、もう家出た?】


スマホに届くアユムからのメール。


俺の中であいつが12歳のままのように、あいつの中でも俺は可愛いセナちゃんのまま。



【うん。今学校に向かってるとこ】


【電話してもいい?ダメ?】


俺はその文章を見て足を止めた。



メールのやり取りはほぼ毎日のようにしてきた。


1日の出来事や近況報告。他の人とのメールは面倒だけど、アユムとのメールは面倒だと思ったことはない。


でも、たまにこうして電話したいと言ってくること。



【ごめん。今はムリかも】


これだけは、かなり困ってる。


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