グッバイ・リトル
幼い頃、なにをしても成長しなかった俺は中学を機に反抗期を迎えて、同時に成長期も経験した。
今までチビだとからかってきたヤツらを追い抜いて、毎晩骨がミシミシと伸びる音に痛くて眠れなかった。
乳製品を避けても止まらない。
バスケ部の入部を避けて帰宅部を選んでも止まらない。
なるべく猫背で歩くようにしても、俺の成長は止まらずに、17歳になった現在。
身長は180センチ。靴のサイズは28センチ。
手も足も肩も身体全体が大きくなっていく成長に抗うことなんてできなかった。
『セナちゃん、可愛いね』
カッコいいと一度でいいから言われたかったあの頃。でも今は違う。
お前は、今の俺を見てどう思うだろうか。
電話なんてできるはずがない。
だって必殺技を叫んでいたあの甲高い声の俺じゃない。
あいつは大きいものが苦手だった。男の担任だった先生にも、あまり近寄らなかったほど。
なんで俺はこんなにでかくなってしまったんだろう。
こんなんじゃ、もうあいつに会えないじゃねーか。