グッバイ・リトル




……と、その時。

横断歩道の向こう側から誰かが歩いてきた。


サラサラとした髪の毛を揺らして、しきりにスマホを気にしてる。



ああ、なんでだろう。


5年が経ってるっていうのに、頭の中では幼い頃のままなのに、アユムだってすぐに分かってしまった。



想像していたよりも、ずっとずっと大人になっていて、泣きたくなるほど綺麗だった。



アユムは赤信号で止まった。

そして俺も向かい側の横断歩道の前で停止する。



距離は二車線を挟んで約50メートル。


アユムは、きっと俺には気づかない。いや、気づかなくていい。



俺はアユムと繋がっていられるだけでよかった。


ケタケタと無邪気な笑顔を浮かべて、俺のことを可愛いと言って隣に寄ってきてくれる。



そんなアユムのことが、離れてからもずっと好きだった。


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