俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「どうして?」

「今回の商業施設はご家族での利用を主軸にしています。買い物中や、人ごみの中、寒い時……甘いものはたくさん歩き回ったり、疲れた時に口にする傾向があります」

特に小さい子どもを連れていると、小休止をよくとる。


脳裏に姉と優月ちゃんと買い物に行った時の光景が浮かび上がる。

優月ちゃんは元気に走り回る分、エネルギーが切れるのも早い。

そしてぐずりだす。


そんな時、休憩がてら自動販売機で飲み物を買うととても喜んで機嫌が直る。

我々大人もそんな時は甘い飲み物が欲しくなる。

かといってあまりジュースを口にしない私や姉は、やはり甘めのカフェオレや紅茶飲料を選ぶ機会が多い。


あくまでも私の経験に基づいているが、この企画を出す際に幾つかのショッピングモールを訪れ、観察をしていると似たような場面に何度も出くわした。


できるだけ簡潔に意見を述べると、如月さんがほんの少し険しい表情を浮かべる。

「それは主に一部の女性の場合よね? 男性は? 炭酸飲料を好む人だっているわよね? カロリーはどうするの?」

矢継ぎ早に飛んでくる質問に瞬時に反応できない。


「それは……」

「道木さんは本格的な企画は初めてかもしれないけれど、新入社員ではないでしょう。
ごく一部の消費者向けの飲料を販売するわけではないのよ。考えが甘いわ。予算は視野に入れてる? 採算を度外視したものは作れないわよ」

真っ当な指摘に言葉を呑みこむ。


即座に幾つもの状況判断ができる如月さんはやはりすごい。

情報の処理能力が私とは全然違う。

瞬時にたくさんのケースを想定できるのは経験値の違いだろうか、仕事のセンスだろうか。
< 113 / 221 >

この作品をシェア

pagetop