俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「さっきはチーフにきつい言われ方をしていたけれど、あまり気にしすぎないようにね」

「ありがとうございます。すみません、私の考えと見通しが甘くて……」

「如月さんの言い方は誤解を生じやすいんだけど、見込みのない人にはなにも言わないの。道木さんに期待しているのよ。あなたの案はとても面白いわ」

「そうでしょうか」

「私たちってどうしても新商品の開発のみに目を向けがちなのよね。あなたが企画に上げた、すでにあるものを改良したり、素材の種類を変えて幾つも提供するなんて斬新な考えは思いつかなかったわ」


優しく微笑みながら廣田さんが続ける。

「同じレモンでもレモンティー、レモネード、レモンスカッシュ、と種類があったら家族で選べるわよね。同じレモンで統一感がでるし、毎月素材を変えるのも面白そうだわ」

「そうだな、俺もそう思う」

ふいに背後から響いた低音にハッとする。


「副社長!」

振り返った私を綺麗な目が優しく見返す。


「戸惑いも多いと思うが頑張ってほしい」

凛とした言い方はまさしく『副社長』としてのもので、今朝の采斗さんの姿とは似ても似つかない。


「は、はい。頑張ります」

「副社長、少しご相談があるのですがお時間をいただけますか? ああ、廣田さん。課に戻ったら今朝お願いした件を仕上げてちょうだい」

カツン、とヒールの音を鳴らして如月さんがきびきびと指示を出す。

その後、ふたりは意見を交わしながら連れ立って歩き出した。
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