俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
踵を返して立ち去る廣田さんを見送りながら、大きな息を吐いた。

その時、会議の連絡のため持ち歩いていたスマートフォンがメッセージを受信した。


【向上心があるのはいいが、無理をしすぎないように】


送信者はさっきまでここにいた采斗さんだった。


今は如月さんと一緒じゃないの? 

こんなメッセージを送ってきて大丈夫なの?


【お前らしく楽しめているようで安心した】

送られてきたふたつめのメッセージに、心が揺れる。


なんで私がこの会議に刺激を受けているってわかるの?

緊張するけれど楽しいと感じているとなぜ気づくの?


彼はあの場にいなかったのに。


通りがかって、内容を少し聞いただけでしょう?

廣田さんだって、私が落ち込んでいるのではと心配してくれていたくらいなのに。

それなのにどうして。


スマートフォンを持つ指が少し震えそうになる。

【もしかして指輪、してたんですか?】


心の動揺を誤魔化すかのように、違う話題で端的に返信するとすぐに返事が届いた。

【約束しただろ。ちなみにお前が首にかけているものを、俺は今すぐ左手にはめさせたい】


とんでもない台詞に心を強く掴まれた気がした。

制服の下に隠したネックレスにそっと上から触れる。


【なんで会議に来られたんですか?】

【妻が心配だったからに決まってる】


即座に返される文面に心が震えて落ち着かない。

その理由も答えも今は見つかりそうにない。
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