俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
副社長はあれ以来会議に参加していない。

多忙な人なのでひとつの仕事にかかりきりになるのは難しいのだろう。


基本的に社内で彼と私が顔を合わせたり、関わる機会はプロジェクトを除けば皆無に等しい。

采斗さんの多忙ぶりは凄まじい。


以前からも知っていたが一緒に暮らすようになってさらに実感した。

帰宅時間が深夜に及ぶ日は珍しくないし、朝も私より出社が早い日は頻繁にある。


笹野さんは私に、大まかなスケジュールを朝と帰宅時に教えてくれるが、耳にするだけで目が回りそうだ。

そのすべてを毎日完璧にこなしているこの人は、やはり誰より優秀で努力家なのだと思う。


そしてなにより会社と仕事を大事にしている。

そんな彼の力に少しでもなりたいと思うけれど、実際はなにをすればいいのかわからずに悩んでばかりの日々が続いている。


出来うる限りの家事と料理を作ってはいるが、元々それほど得意でもない。

きっと彼のほうが上手だろう。


それにそもそも彼が私とともに食事をとれる機会はあまりない。

気遣い上手な彼はそんな私の心中などお見通しのようで、夜食の準備をすれば帰宅後にきちんと食べてくれる。


掃除についてもありがとう、と感謝の気持ちをいつも伝えてくれる。

そのうえ、今はプロジェクトの件もあるから家事は無理をするな、身体を壊しては元も子もない、とハウスクリーニングを勧めてくれた。


押し付けるわけではなく、私の気持ちや意見を尊重してくれる振る舞いに、ただただ頭が下がる。
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