俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
その心遣いにいつも癒されているのだと、感謝しているのだと、どうしたら伝わるだろう?


一度、その旨を笹野さんに相談してみたら、『そのままの気持ちをお伝えくだされば、副社長は一週間くらい上機嫌でおられると思います』と真顔で返されて意味がわからなかった。

さらには『この件は内緒にしていてください。奥様から相談を持ち掛けられたと八つ当たりをされたくないので』と言われてしまった。


もちろん、毎日寝室では一緒に眠っている。

先に休むように言われた日でも、夜中にふと目覚めると彼の腕が私の身体に巻き付いている。


最初の頃は吐息が聞こえそうな距離に、心臓が止まるかと思ったけれど、今ではその体温に安心感さえ感じる。

冷淡で冷静で、無表情。

そんな世間の評判を疑いたくなるくらいに、この人は優しく、思いやり深い。

その甘さと、時折見せる強引さに私の恋の熱は上がりっぱなしで毎日隠すのに必死だ。


結婚後の采斗さんは私を副社長室に呼び出さない。

今さらな気もするが、変な噂が立たないよう注意しているらしい。


けれど如月さんは仕事の兼ね合いもあり今も変わらず訪れている。

そんな些細な現実にさえ、私の心はグラグラと揺れ動く。


副社長の結婚相手は今でも皆の噂の的になっている。

それは社内だけの話ではなく、一度も人前に姿を現さない“妻”に世間のご令嬢たちももしやカムフラージュでは、と諦めていないらしい。


以前に比べて持ち込まれる縁談の数は激減したそうだが、いまだ持ち込まれているものもあるという。

改めて夫がどれだけ世間の女性たちの憧れの的なのかを思い知らされた気がした。
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