俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
『なにもないわ。ただ藤堂夫人は采斗が本当に結婚しているのか、いまだに疑っているのよ』
そのひと言に血の気が引く。
やはりきちんと公表していないせいだろうか。
『長男の櫂さんは采斗の大学時代の同級生なの。長い間海外支社に勤務されていたんだけど昨年帰国されて、藤堂商事の副社長に就任したの。櫂さんからも夫人に話してくださっているらしいんだけど、どうにもね』
ちなみに采斗さんは日本最難関の大学を首席で卒業している。
本当に私の周囲は優秀すぎる人たちばかりだ。
『そもそもお互いを想いあう両親を見て育ったあの子は政略結婚を望まないのに』
その言葉が、鋭い刃のように胸に刺さる。
それならどうして私に結婚をもちかけたの?
答えを知るのが怖いのに、たとえかりそめでも、一番そばにいられる“妻”という立場に喜びを感じてしまう。
私はとてもズルくて、身勝手だ。
『変な話をしてしまってごめんなさいね、あの子をこれからもよろしくね』
『いえ、そんな、私のほうこそ……』
また連絡するわね、といつもの調子で百合子さんは通話を切り上げる。
今しがた知った衝撃的な事実が心に暗い影を落とした。
そのひと言に血の気が引く。
やはりきちんと公表していないせいだろうか。
『長男の櫂さんは采斗の大学時代の同級生なの。長い間海外支社に勤務されていたんだけど昨年帰国されて、藤堂商事の副社長に就任したの。櫂さんからも夫人に話してくださっているらしいんだけど、どうにもね』
ちなみに采斗さんは日本最難関の大学を首席で卒業している。
本当に私の周囲は優秀すぎる人たちばかりだ。
『そもそもお互いを想いあう両親を見て育ったあの子は政略結婚を望まないのに』
その言葉が、鋭い刃のように胸に刺さる。
それならどうして私に結婚をもちかけたの?
答えを知るのが怖いのに、たとえかりそめでも、一番そばにいられる“妻”という立場に喜びを感じてしまう。
私はとてもズルくて、身勝手だ。
『変な話をしてしまってごめんなさいね、あの子をこれからもよろしくね』
『いえ、そんな、私のほうこそ……』
また連絡するわね、といつもの調子で百合子さんは通話を切り上げる。
今しがた知った衝撃的な事実が心に暗い影を落とした。