俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「心配してくれてありがとう。でもそれは孝也の勘違いよ。夫は私をとても大切にして、愛してくれているわ」

言葉にした途端、心が泣き出した。

けれどその痛みには気づかない振りをする。


「嘘をつくな」

「嘘じゃないわ。今まで黙っていてくれてありがとう。きっと近々公表するだろうから、申し訳ないんだけどもう少し内緒にしておいてもらえる?」

「詠菜!」

噛み合わない会話に孝也が私を睨みつける。

その真っ直ぐな視線がつらい。


どうしたらいいの?

これ以上彼に疑われるわけにはいかない。


孝也は副社長の想う相手が如月さんだとは知らないはず。

それならば今はまだ嘘をつきとおせる。


だけどもうすでに私の心はボロボロで、すり切れた神経には余裕がない。

あの人の一番にはなれないのに、愛される妻の役なんて苦痛すぎてこれ以上できない。

込み上げそうになる嗚咽を必死で押しとどめる。


「失礼ですが、私の部下がなにか?」

凛とした冷静な女性の声が背後から突如響く。


「如月、さん?」

振り返った私はチーフの姿に驚く。
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