俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「ごめんなさい、詮索するつもりはないの。ただ越智さんの様子が気になってね。念のために言っておくけどあなたが競合相手である彼に情報を流しているとか疑っているわけでもないわ」


そんな風に見られていたの?


「も、もちろんです! 彼とは、学生時代に交際していたんです」

「ああ、やっぱりね。もしかして道木さんは今も越智さんを想ってるの?」

「まさか、ありえません。別れてから一度も連絡を取っていなかったんですが、先日友人の結婚式で数年ぶりに再会したんです」

「そう。つまり彼のほうが未練があるのね」

はっきり言い切られて返事に窮する。


「でも、復縁するつもりはまったくないので」

「確かに、越智さんのほうが切羽つまっているみたいだったものね」

失礼な言い方かもしれないけれど、とチーフが付け足す。


「それで合点がいったわ。競合相手と深刻な様子で話し込んでいるから何事かと思ったのよ」

「……誤解を招く行動をとって申し訳ございません」

「気にしなくていいわ。ただ藤堂商事とうちは競合中だからその点だけは今後気をつけて。小さな火種を大きくしたり、口さがない噂話を広める人もいるから」

「はい、申し訳ありませんでした」

如月さんのほうに少し身体を傾けて頭を下げると、チーフが困ったように眦を下げた。
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