俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす～お前は誰にも譲らない～

「気にしないで。私だって藤堂副社長に気安い会話をしてしまう時もあるから」

部下に偉そうには言えないの、と明るく話す如月さん。


「初めてお会いしましたが、とても素敵な方で驚きました」

「あの外見だし、学生時代から相当モテてたのよ。特に女性には優しくて親切だから余計にね」

如月さんはほんの一瞬眉間に皺を寄せる。


「藤堂副社長に決まった方はいらっしゃらないんですか？」

「あら、気になる？」

「いえ、そういうわけでは……」

「冗談よ、独身なのは間違いないけど彼の交友関係はあまり知らないの。昔からあんな調子ではぐらかした言い方ばかりするから。本当はとても真面目で優秀な人なのに」

そっと、マスカラが綺麗に塗られたまつ毛を伏せるチーフ。

なぜかその様子が気にかかった。


「そうなんですか」

「彼は私では絶対に思いつかない方向から物事を捉えるの。それがいつも悔しくて羨ましくてね」

「如月さんが、ですか？」

「ええ。特に彼は実家の飲料部門に並々ならぬ思いを抱いていてね、それに触発されて私は日野原飲料に入社したの」

「どうして藤堂商事を選択されなかったんですか？」

「勝手な対抗意識を燃やしていたから、単純に同じ会社に就職したくなかったの。同じ業界の他社で認められたいと思ったのよ。浅はかでしょ」