俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
涙が滲みそうになり思わず顔を上げると、切ない表情を浮かべた如月さんと目が合った。

「なによりも誰よりも大切な人に幸せになってもらいたい気持ちはよくわかるの。たとえ自分が選ばれなかったとしても、その人の力になりたいって想いもね。ティアラはそんな願いを込めて作った商品なの」


胸の奥に氷塊を埋め込まれたような気がした。

胸が痛くて、苦しい。

心が悲鳴を上げる。


それはきっと如月さんの本音で、込められているのは采斗さんへの切なる想い。

やっぱり勘違いなんかじゃない。


ふたりは想いあっていて、なのにお互いただすれ違っているだけ。

ほんの少しベクトルが変わればわかり合える。

私さえいなければ、ふたりの間にはなんの障害もない。


どれだけ長い時間、想いあってきたのだろう。

お互いの幸せだけを願ってきたのだろう。


この期に及んでまだ、自分の想いを優先させてしまいそうな身勝手さが嫌になる。

こんなズルい私が、選ばれるわけがない。

あの人の心の中に存在していたのはたったひとりだけ。


膝の上に置いた手をギュッと握りしめる。

そうでもしないと無意識に震えてしまいそうだ。

できるならこの場から今すぐ消えてしまいたい。
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