俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「……チーフには大切に、想われている方がいらっしゃるんですね」

無理やり絞り出した声が震える。


「ええ、とても大切な人なの。でも自分の気持ちに気づくのが遅かったせいかなかなか素直になれなくて。相手の本心がわかれば楽なのにね……ってごめんなさい、変な話をしてしまって」

「いえ、とても素敵なお話だと思います」

それだけ口にするのが精一杯。


狭量な私はその幸せを今、心から願えない。

こんな醜い自分が嫌なのに、まだ自分の心を守ってしまう。


ただ飲料の仕事だけできれば、それだけでよかったのに。

こんな気持ちは、恋なんか知りたくなかったのに。


それでも孝也の時だって立ち直れたのだから、きっと大丈夫。

私はまだ頑張れる。

この恋を思い出にできるはずだ。


何度も自分に言い聞かせる。


だけどあの時はこんなにも胸が張り裂けそうな痛みはなかった。

何気ない毎日がこんなに色づいてはいなかった。


「恥ずかしいわ。悪いけど内緒にしておいて」

「はい」

無理やり口角を上げる。

引きつる頬の痛みがこれは現実だと私に訴えかける。
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