俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「詠菜、お疲れ様」

昼休み、社員食堂に足を踏み入れた途端、名前を呼ばれた。

入口から少し離れた麺類を注文する場所に親友が立っていた。


「お疲れ様、雛乃。遅くなってごめんね」

「ううん、大丈夫。私も今注文しているところだし。詠菜はなににするの?」

「うーん……ちょっと食欲がなくて。私も麺類にしようかなあ」

「体調が悪いの? 風邪?」

「多分違うと思う」

返答しつつ、列に並ぶ。

この食堂はセルフレジ方式になっている。


出来上がったわかめうどんが乗せられたトレーを手にした雛乃はすぐ近くに並べられている、おかず類を吟味している。


「ちょっと肌荒れしてるわね、寝不足?」

「……そうかも」

「とにかく席に着いて話しましょ。窓際のテーブル席を確保してるから」

そう言って親友はレジに向かう。


その後、私もかけうどんを注文して支払いを済ませ親友の元へ向かった。

箸を持ち、食べ始めたがあまり食が進まない。

親友はすっかり食べ終えている。


「本当に大丈夫?」

雛乃が眉間に皺をよせ、心配そうに尋ねる。


「なんだろ、ここ数日すごく身体が重たくて」

「疲れがたまってる? もしくはまだ旦那様がらみで悩んでるの? 早く話し合いなさいって言ったでしょ」

後半は声を潜めて親友が言う。


雛乃にはこれまでの経緯と離婚届を見つけた件も電話とメッセージで伝えていた。

ひとりで抱え込まず、きちんと采斗さんの意思を確認するようにと何度も諭されている。
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