俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
既婚の姉は実家から一駅の距離にあるマンションに住んでいる。

五歳になるひとり娘の優月ちゃんは素直でとても可愛らしい。

大手製薬会社に勤務する義兄の総悟さんは姉と同い年だ。

何事にも好奇心旺盛な姉とは正反対の穏やかな性格で、いつも両親や私に優しく接してくれている。


姪は毎週土曜日の午前中にピアノ教室に通っている。

いつもは姉が付き添うのだが今週は研修があるそうだ。

『本当にごめんね。発表会も近いし行きたいって泣かれちゃって。朝、優月を実家に連れて行くわね』

「了解」

『そうそう、帰りに本屋に寄ってくれない? 遊園地に行く約束が出張でダメになったお詫びに総悟が買ってあげる約束をしたの』

「うさぎちゃんシリーズ?」

『よくわかったわね! ああ、それと今日、詠菜お勧めの紅茶を会社で飲んだわよ』

「本当? どうだった?」

『おいしかったわ。今までのものと違って、すっきりしていてしつこくない』

「でしょう? お姉ちゃんは絶対に気に入ると思ったの」

姉はこの春から幼稚園の預かり保育を利用し、保険会社にパート社員として勤務している。

勤務先には私が勤務する、日野原飲料の自動販売機が設置されていると聞いていた。

『またお勧めがあったら教えて。早く帰って身体を休めなさいよ』

「うん、ありがとう。じゃあね」

通話を終えてスマートフォンをバッグの中に入れ、家路を急いだ。
< 17 / 221 >

この作品をシェア

pagetop