俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
『お客様のおかけになった電話は電源が入っていないか……』

無機質なアナウンスが耳に届いた途端、慌てて立ち上がる。


詠菜になにかあったのか?


胸の奥がギュッとなにか強い力に掴まれた気がした。

頭から冷水を浴びせられたような気分になる。


その後、笹野とともに急いで自宅に戻った。

車中でも何度も妻に電話をかけるが反応は変わらず、状況がわからない俺はただただ不安を募らせる。


頼むから、無事でいてほしい。

お前になにかあったら俺はどうしたらいい?

誰よりもなによりも愛しいのに。


一緒に生活をするようになって、さらにその想いは強まった。

今までの暮らしがどれだけ味気なく空虚だったのか思い知らされる。

今となってはもう、彼女のいない生活なんて考えられない。


俺たちの出会いはお互いにとって印象のいいものではなかった。

傘を突然見知らぬ、しかも不機嫌そうな相手に差し出したかと思えば突然走り去ったり、突拍子もない行動に呆気に取られた。


けれどなぜか妙に興味をもった。

学生時代から俺に取り入ろうとする女は多かった。

俺の外見、肩書、それだけに惹かれて、それのみを欲する女ばかりに辟易していた。


例外と言えば如月くらいだ。

アイツの場合は単純に俺を恋愛対象に見ていなかったせいもあるが。


両親のようにお互いを想いあう結婚をしたいと願っていたが、その夢は叶わないだろうと半ば諦めてさえいた。
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