俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
『藤堂くんはおかしいと思わないの? 一年の結婚期間ってなに? 馬鹿にしてるわ。その間、どんな気持ちで過ごしていると思ってるの?』

『そんなの、ただの言い訳よ。あなたが好きだから、どんなにつらくて大変でも頑張ってるんじゃない』


如月が放った言葉が俺の心を抉る。


まさか、俺はずっと詠菜を傷つけていた?

俺がどれだけ想いを伝えていても、詠菜は俺が一年後に別れるつもりだとずっと思っていたのか?


「嘘、だろ」

零れた声が掠れる。


「俺がお前を手放すわけないだろ……!」

グシャリと手の中の離婚届が形を変える。


その時、俺のスマートフォンが音を立てた。

慌てて液晶画面を見ると如月からのメッセージが届いていた。


【家出をされた奥様に出会いました。今、駅前の喫茶店にいます】

【奥様に副社長の想いはまったく伝わっていません】


読んだ瞬間、息を呑んだ。

そして最愛の人の無事に心から安堵した。


知らせてくれた如月に感謝の気持ちが込み上げる。

だが、短い文章の中に長年の友人の怒りを感じた。


なにもかも如月の言う通りだった。

俺はなにもわかっていなかった。


詠菜に会いたい。

会ってきちんと俺の本心を伝えたい。

誰よりも愛していると、お前だけが必要なんだと言いたい。


「絶対に離婚はしない」

強い決意を口に出し、俺は踵を返した。


愛しい妻を迎えに行くために。

もう一度彼女をこの腕に抱きしめるために。
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