俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「でも、あなたが好きなの」


口にした途端、こらえていた想いがふくらんで涙が零れた。


「すごく、好きなの。本当は離れたくなんかないの」

情けなくなるくらい拙い告白。

それでも気持ちを伝えたくて精一杯言葉を紡ぐ。


「采斗さんが……」

もう一度口に出した想いは最後まで言えなかった。

ゆっくりと彼が私の唇を塞ぐ。


「……俺のほうが愛してる」

唇で彼が私の涙を拭う。


「泣き虫」

「誰の、せい」

「俺だな。泣かせて、悲しませてごめん。でもこれから先、泣くのは俺の前だけにして」

色香のこもった眼差しが私を捉えて離さない。


「お互いの知らない出来事はこれからゆっくり知っていけばいい。俺たちは夫婦なんだ、時間はたくさんある。俺はお前がいてくれたらそれだけで幸せだ」

きっとこの人は私の弱さもズルさも全部受け止めてくれる。


今なら自信をもって言える。

ありのままの自分でこの人と向き合いたい。


「さっき、副社長室の前で三人の会話を聞いてしまって、それで采斗さんは如月さんが好きなんだと誤解してしまったの」

その後、如月さんが私に気づいて追いかけてくれた件と喫茶店での会話についても伝えた。


「俺がもっと早くにすべてをお前に話せばこんな風に悲しませずにすんだ。本当にごめん」

そう言って彼は私の頭を自身の肩に引き寄せた。


「お前が好きで……好きすぎて手放せないのに、想いひとつうまく伝えられなくて……年上なのに余裕もない自分が情けない」

大きな手で自身の目元を覆う彼の声はひどく弱々しい。
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