俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす～お前は誰にも譲らない～
乱れっぱなしの心をなんとか落ち着けて出社する。

心配していた瞼は、必死に冷やしてなんとかアイメイクを駆使して誤魔化した。

不自然な様子にはなっていないと願いたい。


いつものように迎えに来てくれた笹野さんは穏やかな笑みを浮かべていた。

「すみません、今日からよろしくお願いいたします」

「副社長より伺っています。おめでとうございます。車中で具合が悪くなられた際は遠慮なくおっしゃってくださいね」

「それは俺が見ているから大丈夫だ」

「副社長がいつも一緒だとは限らないでしょう」

あっさり言い切られて夫は渋面を浮かべる。


会社に到着しても総務課まで送ろうとするので丁重に辞退する。

私が副社長の妻だと大多数の社員は知らないのだから不自然すぎる。


『奥様が大事で仕方ないのはわかりますが、しつこくすると今後こそ嫌われますよ』

最終的に冷たく笹野さんに言われ、夫は渋々引き下がっていた。


以前に比べさらに過保護な姿にはまだ戸惑いが大きいが、本来の彼は元々とても優しく思いやり深い人だ。

きっとまだまだ私の知らない彼の姿があるだろう。


けれど、それを今は不安に思ったりはしない。

私たちは私たちなりのペースでお互いを知って歩んでいければと願う。
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