俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
本当に私はたくさんの人に支えられている。

その有難さを心から感じた。

じゃあね、と同期が軽く手を振ってくれた。


それから私は営業課のあるフロアの一番奥、小会議室に向かった。

扉が開け放されており、無造作に並べられた白い長机が目に入る。

そのうちのひとつにパソコンを置き、仕事をしている如月さんがいた。


「失礼します、道木です」

おずおず声をかけると、上司が私に目を向けた。


「呼び出してしまってごめんなさいね。営業課でもよかったんだけど、ちょっと話がしたかったから」

遠回りをさせてしまって悪かったわ、と付け加える。


「いえ、大丈夫です」

「どうぞ」

入室を促され、如月さんと向かい合う席を勧められた。


「昨日の件は副社長から今朝伺ったわ。……本当によかったわ。そしておめでとう。身体は大丈夫? 知らなかったとはいえ、遅い時間に誘ってしまってごめんなさいね」

「いえ、如月さんはなにも悪くありません! むしろ勝手に誤解して、ご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした」

「昨日も言ったけど悪いのは副社長の言葉不足よ、あなたが気にしなくていいの」

「でも」

「この話はもう終わりよ」

「……本当にすみません」

「なにはともあれ、よかったわ。あなたが副社長を見限らなくて」

「見限る、なんて」

「だって許してあげたんでしょ? 副社長、朝一番にものすごく嬉しそうな表情で報告してくれたわよ。本当の意味できちんと想いが通じて、話し合えたって」

「いえ、あの、きちんと不安や本心を伝えていなかった私のせいでもあるんです」

「あなたの立場と状況じゃ伝えにくいでしょ。だから最初から反対していたのよ、きちんと言うべきだって。まったく人騒がせよね」

しっかり今朝も嫌味は伝えたけど、と付け足す如月さん。
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