俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
時間は目まぐるしく過ぎて十一月になった。


あの後、すぐに両社社員に今後のプロジェクトの方針が伝えられた。

しばらく社内は騒然とした雰囲気になってはいたけれど、皆、どこか楽しそうに新しい試みに打ち込んでいた。 

有能なふたりの副社長と上司のおかげもあってか、藤堂商事との提携業務は順調に進んでいる。


藤堂副社長はなぜか私の家出に責任を感じてくださっていた。

今回の私たちの結婚について最初から知っていたのに、と気にしてくださっていて居たたまれなかった。


そして元恋人には職場で再会した際に話をした。

孝也ときちんと話がしたいと伝えた時の采斗さんの不機嫌そうな表情は今も忘れられない。


『孝也、ごめんね。私は夫を愛してるの』

『未練を持ってたのは俺だけだってわかってたんだ。お前と別れた後、お前の考えを少しでも理解したくて飲料会社に就職した。でも俺は間に合わなかったんだな。詠菜、幸せにな』

『うん、ありがとう』


交わした短い会話に今の私の気持ちをすべて込め、彼の今後の幸せを心から祈った。
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