俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす～お前は誰にも譲らない～

すでに出勤していた三歳年下の後輩、西野真理子(にしのまりこ)ちゃんと挨拶をかわし、サッと机周りを拭く。

パソコンを起動し、メールチェックを行う。

その合間に後輩に慶弔書類作成の雛型を教えたり、備品と名刺の追加発注など午前の業務を粛々とこなす。


急を要するものから順に処理しているとあっという間に昼休みになり、商品企画課に所属する同期の雛乃がやってきた。

百七十センチメートル近い、すらりとした長身に艶やかな明るい茶色のボブショートヘア。

小鹿のような大きな目が印象的な彼女はその可愛らしい面立ちに反して、自分の考えをはっきりと口にする。

入社してすぐの懇親会で意気投合し、今ではなんでも気兼ねなく話せる大事な親友だ。


「詠菜、仕事ひと段落した？　お昼ご飯食べに行かない？」

「うん、行く。ちょっと待ってね」

お互いの時間が合う時は一緒に昼食を食べている。

返事をし、机周りを片付けてパソコンの電源を落とす。

自席にまだ残っている同僚に一声かけて席を立ち、フロアを出た。


「昨日、葎(りつ)と家で焼肉をして食べすぎちゃったの。だから今日はあっさりしたものが食べたいわ」

「大丈夫？　じゃあ今日はお蕎麦にする？」

「うん、ありがとう。助かる」

細い指で軽く胃を押さえている親友を横目で見つつ、歩き出す。

雛乃も実家暮らしで、高校生の頃から付き合っている同級生の彼氏がいる。

大手証券会社に勤務する葎くんとはお互いの実家も近いらしく、喧嘩もよくしているがとても仲が良い。

お互いを大切に想い合うふたりの関係が少し羨ましい。