俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「ひとつ教えてあげる。副社長はどんなに噂になった女性とでもビジネス以外では一度しか会わないのよ」

私の質問には答えずに、楽しそうに頬を緩める雛乃。

まったく話の意図が掴めない。

「なに、それ」

「だから皆、特別な存在として再び会うために私的な連絡先を知りたがっているの。私の親友が手に入れた連絡先をね」

ニッコリと優美に口角を上げる親友はとんでもなく楽しそうだ。

対する私は嫌な予感しかしない。

「何度も言うけど、私には関係ないの。雛乃が期待している恋愛事には発展しないわよ」

念のためにクギを刺す。

恋愛至上主義の同期は、すぐその方向に話を持っていきたがる。

「なに言ってるの。いつまで飲料と恋愛してるのよ?」


飲料会社に就職したせいもあり、飲料好きに拍車がかかっている自覚はある。

好きな飲料について語りだすときりがなく、ラベルのデザイン、ボトルの形といった見た目から始まり、味まで熱く話してしまう。


大学時代から付き合っていた恋人と四年前に別れて以来恋愛とは縁遠い。

元恋人は私の飲料好きに呆れていた。

お目当ての商品のため、幾つも店舗を探し歩くなんて理解できないと何度も言われた。

時間のすれ違いが直接的な別れの原因だったが、価値観の違いも大きかったのではと今になって思う。
< 27 / 221 >

この作品をシェア

pagetop