俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
飲料と恋愛を比較するのは間違っているが、それ以上の情熱を傾けられる異性にはいまだ出会えていない。

そもそも交友関係も広くなく、ほぼ会社と実家の往復のみという毎日の中で素敵な出会いなんてあるわけがない。

今の毎日に不満はないし、正直しばらくこのままでいいと思っている。


「だって、好きなんだから仕方ないでしょ」

「その情熱を少しでいいから恋に落ちそうな相手に向けてほしいわね。ああ、そう言えば今度の新規プロジェクトの企画、応募したの?」

「うん、先週手続きを済ませた」

「早いわね。今回はずいぶん大きなプロジェクトになるみたいよ。都内の一等地に新たにできる商業施設に、自社の自動販売機をぼぼ独占状態で置いてもらえるんだから上層部の力の入れようもわかるけど。チーフには如月(きさらぎ)さんが就くみたいだし」

「如月さんが? 今度はどんな飲料を提案されるんだろう」

如月弥稀(みき)さんは企画課の主任だ。

雛乃の直属の上司ではないが、同じ部署のため交流はあるらしい。

如月さんは私の憧れだ。

彼女が中心になり企画、開発を手掛けた飲料は魅力的で、いつも素晴らしい売り上げを叩き出している。

「私も三十一歳になったら、あんな風にキビキビ仕事ができるかな」

「詠菜は十分仕事していると思うけど。飲料への愛が重すぎるくらいよ」

「失礼ね。雛乃は企画、出さないの?」
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