俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「あの、副社長?」

クックッと声を漏らし、髪を長い指でかき上げる。


「本気で気に入った」

色香のこもった目を真っ直ぐに向けられ、どう反応してよいかわからなくなる。


「縁談相手を俺がこっぴどく振ったとか、お前が噂を流すか様子を見てたんだが」

「そんな噂、流しません!」

ひどい言いがかりに憤慨する。


「様子を見ていたと言っただろ? それに別件も確めたかった」

「別件?」

「お前への興味」

「は……い?」

衝撃的な台詞に、一瞬理解が遅れる。


なにを言っているの?


「その表情、本当に素直だな。ますます欲しくなる」

ハッとして、頬の内側を強く噛みしめる。

「意味がわからないのですが」

「お前を本気で手に入れたいと言ったらわかるか?」

端正な面差しがさらに近づく。


「あの日からずっと、お前を探していたと言ったら信じるか?」

妖艶な眼差しに射抜かれて動けなくなる。

頬が信じられないくらい熱い。


どうして私は動揺しているの? 

こんなの、まるでこの人に惹かれているみたいだ。 


「そんなはず、ありません」

必死に絞りだした声は、思った以上に弱々しい。


「お前の素直すぎる反応は面白いし、飲料好きなところも気に入った」

ふいに右手が伸びて、骨ばった指が顎下の髪をひと房掬う。

その髪に躊躇いもせずに口づけられてひゅっと息を呑んだ。

激しく鳴り響く鼓動は痛いくらいで、制御できない。
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