俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
眼前に差し出された紙に記載されている内容は、今年に入ってすぐ販売された新商品の紅茶飲料に関する意見。

当社では新商品の発売が決まると広く一般消費者にモニターとして感想を求める。

それと同時に社内でも様々な部署の社員にモニターの役割を課す。


紅茶飲料『ティアラ』は以前姉にも勧めたものだ。

甘くないストレートティーでこれまでにないすっきりした後味が特徴なうえ、ボトルデザインもカッコいい。


この飲料の企画、開発を手掛けたのは如月さんだ。


さらにはティアラブルーというペア商品が数カ月後に販売され、注目された。

こちらは様々な旬の果実を期間限定で使用したフレーバーティーが主軸となっている。

果実の種類はインターネット等で広くアンケートをとり、人気の高いものを採用する取り組みが斬新だった。


ティアラのモニターに選ばれた時はその幸運が信じられなかった。

モニターは商品を試した後に、感想など指定の意見書を提出する。

副社長が手にしているものは私が以前に提出したものだ。


それがなぜここに?


「私のものです」

「総務課の道木詠菜ってお前だったんだな」

フッと副社長の声が漏れる。

この部屋に入って初めて聞く優しい声に戸惑う。
< 38 / 221 >

この作品をシェア

pagetop