俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「大変興味深い意見が幾つも書かれていると、副社長は何度も読み返されていました」

「え……」

「単純にお前が紅茶を好きなのはよくわかったが、それ以上に率直な意見が参考になった。まあ、子どもの思いつきのようなものがほとんどだったが」

褒められている気がしない。

精鋭ぞろいの商品企画課や営業課の社員が作成する企画書に比べたら稚拙で未熟な意見だとはわかっている。


「でも飲料への情熱はとても伝わった」

ふわりと相好を崩す。

そんな表情は反則だ。

嫌味な言い方をしたと思ったらいきなり甘い顔をするなんて。


「お前、これまでも企画書を提出しているだろ。なんで商品企画課に異動願を出さないんだ?」

「数年前に一度出しましたが……総務事務もやりがいがあって好きなので」

これは本心。


入社時の面接では商品企画に携わりたいと伝えていたが、細かいマーケティング調査などは不得手だった。

人事は私のそんな性格を見抜いていたのかもしれない。


総務は社内の様々な部署と関わりを持つ。

それこそ新商品の話や噂を小耳にはさむ機会も多々ある。

私の趣味で、癒しでもある飲料を世の中に送り出してくれる部署の方々を手伝う仕事、誰かの力になれる仕事ができる現状に不満はない。
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