俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「本当に申し訳ありません、急いでおりまして足元をよく見ておらず……」

「なんともありませんので、どうぞお気になさらないでください」

言葉遣いは丁寧なのに、機嫌の悪さをひしひしと感じる。

再度スーツの状態を尋ねようと口を開きかけた時、これ以上関わってほしくなさそうな雰囲気を瞬時に肌で感じた。


絶対面倒だと思われているよね……。

私に今すぐ立ち去ってほしそう。

よし、もう一度丁重に謝罪をしてすぐ立ち去ろう。


「……申し訳ございませんでした」

「いいえ、本当に大丈夫ですので」

頭を下げて謝った時、ポツリと目の前に水滴が落ちてきた。

「雨?」

小さく呟いて頭を上げると、降りはじめにもかかわらず、大きな雨粒がパタパタと落ちてくる。


この辺りには雨宿りができそうな場所はない。

ここから教育センターの入り口までは、少し距離がある。

全速力で走っても五分はかかるはず。


迷わずバッグから折り畳み傘を二本出す。

そのうちの一本、淡いベージュの傘を男性に差し出した。

「あの、よかったら使ってください。男性おふたりでは少し窮屈かもしれませんが」

美形男性の傍らには、もうひとりの男性が戻ってきていた。

三十代後半くらいだろうか。

凛々しい眉をしたこちらの男性のほうが、年上に見える。


さすがに初対面の私と相合傘をしましょうとは言えないし、仕方ないよね。
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