俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
結局そのまま駐車場まで運ばれて、社用車の後部座席に押し込まれてしまった。

もちろん隣は副社長だ。


こんな私用で使ってはと遠慮すると、帰り道だしついでだから構わないとどこまでも傲慢な意見が返ってきた。

助手席に座る百合子さんには敏腕秘書の笹野さんが説明していたのか、心配そうな目を向けられた。


さらには体調も尋ねられて居たたまれない。

この様子だと笹野さんも私の体調には気づいていたのだろうか。


何度ももう大丈夫だと言っているのに、副社長はさり気なく私の肩を自分のほうに凭れさせる。

体勢を変えようにも腰をがっちりつかまれて動けない。

小さな子どもでもないのに、過保護すぎる。


「あら、降ってきたわね。迎えに来てくれてよかったわ」

突然フロントガラスをたたく雨粒を見て、百合子さんが声を上げる。

「あの、私、傘を持っているので近くの駅でおろしていただけたら」

「自宅まで送るに決まってるだろ。それにしてもお前、なんでいつも傘を持ってるんだ?」

「いつもじゃありません。この間も今日もたまたまです」

「へえ、じゃあ運命だな」

「え?」

「お前が傘を持ち歩いていたから、俺は傘を借りれて知り合えた」

「ただの偶然、だと思いますが」

「偶然も運命のうちだろ? それに気づくかどうかだ」

自信満々に言い切る姿に、コトンと胸の奥でなにかが動いた。


込み上がるこの熱い想いはなんだろう。

言い返したいのに最適な言葉がでてこない。
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