俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす～お前は誰にも譲らない～

どれだけ断っても、自宅前まで送ると副社長は譲ってくれなかった。

せめて百合子さんを先に送ってくださいと譲歩案を出すと、それは受け入れてもらえた。

その間、彼の祖母はとても楽しそうに私たちのやりとりを見つめていた。


百合子さんが降車した後、雨はすっかり上がっていた。

百合子さんのご自宅はそれはもう立派なお屋敷で、その堂々たる佇まいにやはり住む世界が違う人たちなのだなと思い知った。


「……ありがとうございました」

近所の方々に見られると気まずいので、自宅マンションの少し手前で車を停めてもらう。

お礼を告げて素早く車を降りると、なぜか副社長も車から出てきた。


「少し顔色が戻ったな。大丈夫か？」

そっと彼が私の頬に指を滑らせた。

それだけで私の鼓動が再び暴れ出す。


「はい、あの、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。もう平気なので」

「迷惑じゃないから気にするな。くれぐれも無理はするなよ。家の前まで送る」

淡々と告げられ、荷物を取り上げられてしまう。


「いえ、結構です。ここまでで十分ですから、荷物を返してください」

人目に付くのでできるだけ早く引き上げてほしい。

幼い頃から住んでいるこのマンションには知り合いが大勢いる。

噂好きのおば様方に見つかりでもしたら、すぐに両親の耳に入ってしまう。