俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす～お前は誰にも譲らない～
「……そうなんだ」

「越智とは部署が違うし、最近あまり話す機会がなかったの。でもこの間、社内で会った時にやたら詠菜について聞かれたのよ」

「元彼女にどこかで偶然とかでも再会したくなかったんじゃない？」

「そんなの当たり障りない会話でもしてやり過ごせばいいだけじゃない。お互いいい大人なんだから。でもそういう雰囲気じゃなくて、詠菜に今、恋人はいるのかって聞かれたのよ」

「え？」

「その時の越智の雰囲気が……なんだか切羽詰まってる感じがしたのよね。だから復縁を狙っているのかなあって。詠菜に今、恋人がいるかどうかは知らないって答えたけど」

「ありがとう。気を遣わせてごめんね」


別れ話自体は拗れたりはしなかった。

けれど、別れる直前の私たちの間には嫌な重たい空気が漂っていた。

友人だった頃はお互いを大事に尊重しあっていたはずなのに、とつらい気持ちになったのは苦い思い出だ。

もうあんな想いを味わいたくはない。


なにより越智は、私の飲料好きを好ましく思っていなかった。

企画書の作成に夢中になってデートの日や場所を変更してほしいと伝えるたび、露骨に嫌な顔をされ遠回しに嫌味を言われた。

そのたびに自分が間違えているのか、おかしいのかと何度も悩んだ。


友香はその時の私を知っている。

きっと私の飲料への情熱は一生変わらない。

だから彼とはこの先も相いれないだろう。
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