俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「ううん。ねえ詠菜は今、付き合っている人はいるの?」

「いない、けど」

「けど? 好きな人でもいるの?」

追及の手を緩めない友人は、歯切れの悪い私の返答を見逃さない。


ああもう、なんでこんな話になるのだろう。


「そういうわけじゃ……」

「ふうん、まあとにかくひとりで越智と接しないようにね」

優しい友人は納得がいかなそうだったが、ひとまず引いてくれた。


「ありがとう。気をつける」

そう返答した矢先だった。


「詠菜?」

背後から響いた懐かしい声に思わず振り返る。

そこには今、忠告を受けたばかりの元彼がいた。

隣にいる友香は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべている。


「……孝也(たかや)

「久しぶり。元気そうだな」

白い歯を見せて話しかけてくる爽やかな姿は、数年前の別れをすっかり忘れ去ったようにも見える。


「うん、孝也も元気そうだね」

「来ているとは思わなかった。坂本(さかもと)に聞いてもよくわからないって言われてたし」

チラと孝也が友香を見て言う。


「詠菜が出席するかどうか、その時は知らなかったんだから仕方ないでしょ」

「私、出席の葉書を出すのが遅かったから」

「詠菜、少し後で話せないか?」

「ダメよ、私たち今日はずっと女子会代わりに話す約束なんだから」

友香がさり気なく断りを入れてくれる。


「俺は詠菜に聞いてるんだ。坂本は関係ないだろ」

「話があるなら今ここで言えばいいじゃない」

友香も負けてはいない。

段々ふたりの雰囲気が険悪になってきて、慌てて声を発する。
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