俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「孝也、ごめん。今日は友香や皆と一緒に過ごす約束だし、会場内では会えるけどふたりきりは難しいと思う」

「二次会も参加するのか?」

「うん、そのつもりだけど……」

「じゃあ、二次会の後は?」

「ええと、それだと遅くなるし」

二次会は午後七時から始まる予定だ。


「じゃあ、別の日にふたりで会えないか?」

「別の日、って急に言われても今、予定もなにもわからないから」

諦める様子を見せない孝也に内心戸惑う。

しかもやたらと距離を詰めてくる。

今さらなにを話せと言うのだろう。


「連絡するよ。電話番号は変わってない?」

少し手を伸ばせば触れ合えそうな近い距離に違和感を感じ、無意識に後ずさる。

ほんの少し感じた嫌悪感。


連絡先を確認されて、どう返答してよいかわからなくなる。

そんなに身構える必要もたいした用件もないのかもしれない。

でもそれなら尚さら、ふたりで会う理由はない。


「いい加減にしなよ。詠菜が困ってるでしょ」

見かねた友香が助け船を出してくれる。

私の友人は雛乃もそうだけど、本当にしっかりしている。


「なんで困るんだよ」

「突然元彼にふたりで会おうなんて言われたら、戸惑うに決まってるじゃない」

「そんなわけないだろ」

「詠菜の彼氏が聞いたら怒るわよ。結婚前提で付き合っているらしいし」

「は? 詠菜、そんな奴がいるのか?」


途端に鋭い視線を向けられて、返答に詰まる。

友香は孝也に気づかれないように私に目配せをしてくる。

恐らく、そういう話にしておけという意味なのだろう。
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