俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「う、うん。本当なの……」

「きゃあ、すごい! 知らなかったわ。もうっ、それならそうと早く言ってよ!」

孝也が声を発するより早く、友香が歓喜の声を上げる。


「すみません、まだ内々の話なのでここだけの話にしていただきたいのですが。最近仕事が忙しくて、なかなかふたりきりで会えなかったので、姿を見かけて思わず声をかけてしまって……お話中に不躾な真似をしてしまって申し訳ない」

誰をも魅了できそうな甘い微笑を浮かべる副社長は、どこまでも抜かりがない。


「もちろん内緒にしておきます。そうよね、越智? ほら久しぶりのふたりの再会を邪魔しちゃ悪いから行きましょ! 詠菜、先に会場に行ってるね」

空気が読める友人はそう言って、まだなにか言いたげな孝也の腕を強引に引っ張り先に行ってしまった。

取り残された私は、呆けたようにただただふたりの姿を見送っていた。


「アイツがお前の元恋人か」

ポツリと漏れた声にハッとする。


「ふ、副社長、これは一体……!」

「静かに。聞こえるぞ」

問い詰めようとした私の唇に、副社長が長い人差し指をあてる。


いきなりの親密な仕草に呼吸が止まりそうになる。

唇に触れる指の感触に、先ほどから乱れている鼓動がさらに暴れ出す。
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