俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「わ、私は物じゃありません……!」

「知ってる。いっそ物だったらいつでも簡単に持ち運べていいんだが」

とんでもない言葉を口にして、ニッと軽く口角を上げる。


まったく、この人は一体なにを考えているんだろう。

こんなにも目立つ場所で“婚約者”だなんて口にして、困るのは私ではなくきっと彼なのに。


「婚約だなんて言ってよかったんですか? 万が一孝也が本気にしたら」

「どうせ結婚するんだから同じだろ?」

「そのお話はお断わりしましたよね」

助けてもらったのに、いまだ感謝の言葉ひとつ口にできない私は本当に可愛げがない。


こんな喧嘩腰に話したいわけじゃないのに。

どうしてこの人にはいつもこんな態度しかとれないんだろう。


「俺は諦めていないぞ」

いつの間にか私と向かい合う位置に移動していた副社長が、低い声で問いかける。

「なにを……」

「きっとあの様子じゃ、アイツは俺たちの関係を徹底的に調べるだろうな。それにここはう
ちと付き合いの深い九重グループの系列ホテルだ。すでに情報が九重の上層部に流れてい
る可能性もある」

柔らかく相好を崩す姿はまるで悪い王子様のようだ。


「それに通りすがりの目撃者たちが、面白おかしく噂を吹聴してくれる。お前は俺と結婚せざるを得ないんじゃないか?」

「まさか最初からそのつもりで……?」

「お前がほかの男に言い寄られてる姿を見るのは不愉快だ。お前をからかうのは俺だけの特権だろ?」
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