俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
意味がわからない。

不愉快ってなに?

そんなのおかしい。

まるで私がこの人の恋人みたいに聞こえる。


「困るのは副社長でしょう! 今からでも婚約は誤解だと訂正すべきです」

「九重の副社長は愛妻家で有名だ。結婚を軽々しく扱うと今後の関係にひびが入る。当社が九重グループと取引があるのを知っているだろ?」

九重グループの副社長と当社副社長は学生時代からの友人関係だというのは当社ではよく知られた話だ。


「それにお前だって一旦言い切った手前、訂正しにくいだろう?」

勝ち誇ったような声が耳に痛い。

そしてそれを否定できない自分が悔しくてイラ立つ。


「だからって、やりすぎです。それに副社長になんの得にもなりません」

「十分メリットはあるぞ。鬱陶しい縁談がなくなるし、女と遊び歩いているとかいう馬鹿馬鹿しい噂に終止符も打てる。俺の評判と会社のイメージも格段によくなる」

なにか問題か、とで言いたげに返答されて逆に言葉に詰まる。


「俺と結婚する以外にお前に逃げ道はない。第一、俺以外の男の名を呼び捨てにするのも、お前が呼び捨てにされるのも気に入らない」

そう言って、腰に回した片手をほどき、すっと指先で私の頬を撫でる。

触れられた部分が瞬時に熱をもつ。


「気に入らないって……孝也は元々学生時代からの友人で」

「それでもだ。ああ、それと今日から正式な結婚相手になるんだ。きちんと俺を名前で呼べ」

「なにを言い出すんですか!」

この急展開に戸惑っている状態で、名前を呼ぶなんてありえない。
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