俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
『ちょっと詠菜、聞いてるの?』

「あ、ごめん。ええと、副社長がプロジェクトに参加するって話でしょ、でもなんで?」

『大きな仕事で副社長が陣頭指揮を執るのは珍しくないわよ』

「それはそうだけど……」

『詠菜の企画はきちんと部長会議で多数決をとられたらしいから、不正も身内びいきもないし心配不要よ』

どこまでも察しのいい親友は私の心中を簡単に推し量る。

周囲を気にしてか、ほんの少しひそめた声が耳に届く。


それにしてもどこからそんな情報を仕入れてくるのか。

相変わらずの情報網に舌を巻く。


『とにかく頑張ってね、なにかあったら相談して』

「うん、ありがとう」

礼を告げて、受話器を戻す。


「飯館さんですか?」

真理子ちゃんに尋ねられ、頷く。

一瞬、副社長のくだりが聞こえていただろうかと焦るが、後輩に変わった様子は見られない。


「うん、お祝いを言ってくれたの」

「今回のプロジェクトって、如月さんがチーフでしたっけ? 厳しい意見が飛び交いそうですね」

「そうね、でもそれも少し楽しみよ」

「本当に詠菜さんは仕事好きですよね。それより副社長情報、楽しみにしてますから」

副社長、という単語にぎくりとする。

「ふ、副社長って」


まさか私たちの結婚に気づいてる?

一瞬、どう取り繕えばいいのか逡巡する。
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