俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
なんでそんな守れない約束なんてするの?

一年後の私たちは別れているでしょう?

あなたが本当に結婚式を挙げたい人は私ではないでしょう?


「忘れるなよ」

彼が絡めた指に力を込める。


なぜこんな風に優しく私に触れるの? 


いちいち気にする必要はないし、ただの演技だと割り切ってしまえばいいのかもしれない。

それなのに私の心は敏感に反応してしまう。


「離婚届、本当に用意してほしいのか?」

唐突に問われて歩く足が止まる。


私と離婚しなければ如月さんと結婚できないのに、なんでそんな確認をするの?


絡まった指から伝わるのは、ここ最近ですっかり慣れてしまった高い体温。

彼は一緒に歩く際にいつも私と指を絡める。

誰かに見られたら困らないのか、と尋ねると見せつけてるんだ、と言い返されたのはいつだっただろうか。

如月さんは誤解しないのか、と口に出せない私は弱虫だ。


「……もちろんです」

「不要だと思うが……まあ、いい」


低い声にほんの少し不機嫌さが交じったように感じたのは気のせい?


「お前は俺の妻だ。よそ見するなよ」 

私にはやっぱりこの人の考えがわからない。
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