俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
タッチレスで玄関を解錠し、室内に促される。

バタン、と背後で玄関ドアが閉まる音がした。


「詠菜」

呼ばれて振り返ると、突然唇を重ねられた。


「な、に……っ」

まるで離れるのを拒むかのように、腰に回された長い腕。

顎が骨ばった指に掬われる。


唇に落ちる吐息に鼓動が暴れ出す。

見開いた私の目に映る、軽く伏せられた長いまつ毛。

その下から僅かに覗く妖艶な目に息を呑む。


そんな私の心中を知ってか知らずか、彼は何度も嵐のようなキスを繰り返す。

まるでなにかを性急に訴えるかのように。


頭の中がキスの余韻で痺れかけた時、唇を解放された。

腰に回された腕はそのままに、首筋にそっと長い指が触れて、甘い声が耳をくすぐる。


「今日からよろしくな、奥さん」

心の中に染みこむ、慣れない呼び名。


「よ、よろしくお願いします……」

そう返事をするだけで精一杯。


耳元近くに落とされたキスに思わず肩を竦める。

突然のキスの嵐に心が乱れて仕方がない。


「左手、出して」

腰にまわした腕をほどいた彼に言われ、左手を差し出す。


彼が玄関の脇に置かれていた小さな赤い箱を手に取った。

中から現れたのは眩い光を放つシンプルな指輪だった。

迷いもせず、彼はそれを私の左手薬指にはめた。
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