俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
先月末、プロジェクトメンバーの顔合わせがあった。


責任者は企画部長となっているが実質的には如月さんがチーフとして任されていた。

副社長自身も基本的には口を出さずメンバーに任せているといった具合だ。


憧れの先輩は本当に素敵な女性だった。

肩までの艶やかな黒髪、凛とした姿勢にハキハキとした話し方、配布された資料もとてもわかりやすかった。


今回は企画が採用された私のほかに企画課、営業課からも三人の人員が集められていた。

後輩から以前聞いていた通り副社長と話をする如月さんの姿は自然で、とてもお似合いだった。


こんなに素敵な恋人がいるのに、なぜ私にプロポーズしたのだろう。

でもそれを采斗さんに尋ねるのを躊躇う私がいる。

ふたりの関係に踏み込んでいいのかもわからない。


「お前の親友といった一部の人間を除いては、誰も知らない」

「結婚相手が私だと社内の方々に知られてもいいんですか?」

如月さんに知られていいはずがない。


「俺の親族、友人にはすでに話してあるし、なんの問題もない」

意味がわからないと言いたげに彼の眉間の皺が深くなる。

不機嫌さの混じった声が耳に響く。


「お前は嫌なのか?」

「いえ、私ではなくて……困らないのかと……」

あなたが。


「困る?」

「私は企画の初心者です。今回のプロジェクトへの参加に疑問をもたれている方もいらっしゃると思うので」

本心を口にできない、意気地のない私は無理やり話をこじつける。
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