俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
――本当に、いいの?

私があなたの“妻”でかまわないの?


心の中の問いかけは口に出せない。


するりと彼の左手薬指にシンプルな指輪が収まった。

その瞬間彼が嬉しそうに口元を綻ばせ、自身の指輪にキスを落とす。


「この指輪は外さない」

自分がキスをされたわけでもないのに、頬が一気に熱をもつ。

私の様子を目にした彼が、色香のこもった眼差しを向ける。


「俺の妻はお前だけだ。この指輪に誓う」

そっと長い指が私の顎を掬う。


額、瞼、鼻、頬に再び甘いキスの雨が降る。

頬に彼の前髪が微かに触れる。

その感触がくすぐったい。

最後に落とされた唇へのキスは、とても優しくて甘い痛みが胸の中に広がった。

 
その後、結婚についてはプロジェクトが落ち着くまでは公表しないように再度彼に願い出た。

けれど采斗さんはどこか不満そうだった。


「お前については伏せるが結婚発表はするぞ。すでに一部の関係先には知られているからな」

そうだった、彼の友人たちのほとんどが大企業の御曹司だという事実を忘れていた。


「いいんですか?」

「なんでそんなに心配するんだ? 元彼に知られたくないのか? それとも公表されたくない理由でもあるのか?」

「まさか!」

あるとしたらあなたなのに。


「ならいいが、今さらアイツにもほかの誰にもお前は渡さないからな。それと今後俺に敬語を使うたびにキスするからそのつもりで」

「お、横暴です!」

「お前が慣れればいいだけだろ。それともキスがよければ遠慮なくするが?」  

しれっと言い放つ、端正な面差しが憎らしい。

しかもやたらと距離が近い。
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