無題


俺は、留学前の家に一人暮らしをすることになっている。


その、隣の家にアイツ、「春樹(ハルキ)」は住んでいた。


今も住んでいる。



荷物は明日届く。


誰が越してくるかは、春樹の親に「春樹には驚かせたいんで、黙っててもらえますか?」って言った。
ドSな春樹の両親は喜んでOKしてくれた。
「でも、龍太くんのことをあの子が忘れてたらサプライズじゃなくなるわね」
それはひどいですよ、春樹母。


家の前でタクシーを降りると、庭の花に水やりをしているアイツがいた。


「よぉ、春樹!」

俺は、夏休み中にクラスメイトに出会い、一声をかけるかんじに言った。


「えっ?………りゅ……、ちゃん?」


アイツは唖然として、如雨露(ジョウロ)を落とす。

「驚き方が大袈裟だな」

アイツは、花の手入れをしていた汚い手で抱きついてきた。

「りゅ……ちゃっ、……りゅう……ちゃんっ!」

俺の名前を呼ぶアイツは、泣いていた。

泣き虫なところは変わってねぇな。

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