堕天の翼
その…目の前の光景…に、足元から崩れ落ちるかのような…衝撃を受けた…

「……っ!」
《なに…っ? あれ?

成宮くん、さっきの…お姉さんと…っ!》

その、目の前の光景は、図書室で2人…口付けを交わし…、悠のその手が姉の奈都子のワンピースの中に入っていく…


瑞希は、本棚の隙間に琢磨に連れてこられ…そこでの2人の絡みを目の当たりにさせられていた…

口元を押さえ…、声を殺し…。。今すぐ、この場から逃げたい衝動に駆られる…

が、琢磨に両肩を捕まれ…、身動きが取れない…

「…っお…っと!」

足元から、倒れ落ちそうになった自分を…抱き抱える人物…

その人物の方を見上げる…

「…しっ! ね。面白いでしょ?
姉弟で、あんな濡れ場…そうそう見れないよね?」

血の気が引いていくのを…感じた…

涙で、目の前が見えない…

「あの2人…、成宮が高一の頃から…あぁいう関係だよ?
それでも、アイツのこと、好きなの?」

その、頭の上から聴こえた言葉に、瑞希は、琢磨の方を見上げる…

「…好き…?」
《…【好き】…だった…

でも…、血の繋がりはない…と、言っても…

お姉さんと……っ?

本当に…っ?》


やっと、絞り出したかのような声…

「アイツは、瑞希ちゃんが思っているような奴じゃないよ。義理とは言っても…姉弟であんな関係続けてて…異常だろ?
それだけじゃないけどね…っ」

「……っ」

茫然自失…とも取れる瑞希の表情に、琢磨は、その瑞希の顎先に触れ…

「瑞希ちゃん、俺と付き合わない?」

その、信じられないような言葉に、瑞希はさっと我に返った…

次の瞬間、琢磨に唇を塞がれていた…

抗おう…にも、抱き寄せられた腕の強さに…、抵抗する術は何も無かった…


「…ん…っ!」

その脳裏に、先日、悠と口付けを交わし…。。今朝、電車の中で抱き締められたことが思い浮かんだ…

涙が、溢れ出した…

自分が、こんな状況下でも…、恋焦がれ…、本当に追い求めている人は、彼だということに…


…が。。。


彼の抱えている秘密は、瑞希が思い描いていたモノとは計り知れない程…、深く…大きなモノだった…


気持ちのない…口付けを交わしても…

背筋が凍りつき…、嫌悪感が増すばかり…だった…

「…っイヤ…っ!」

その声…と、共に…

瑞希は、抱きすくめられていた手を振りほどいた…

そのまま…、瑞希は、図書室の通路を駆けて行く…

「……っ!」

その声に、互いを貪り合うように口付けを交わしていた2人は、瞬時に…身体を離す…

悠は、その…聞き覚えのある声に…血の気が引いていくのを感じた…

その、声がした方を振り返る…と、ちょうど瑞希が駆けていく…後ろ姿が、その瞳に映った…

「あら〜、見られちゃったわね…」

「……っ」
《いまの…、鷺森さん…っ?

いまの…、見られていた…》

力なく…、足元がふらつきそうになりながら…立っていられるのが…、やっと…だった…


瑞希に、全てを知られるとは…思わなかった…

いゃ、自分が彼女のことを好きだと気がついた時点で、彼女を巻き込んでいる…


その時点で…、全ては、終わっていたんだ…と。。



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